軽度発達障害児支援現場レポート―実践者のつぶやき―

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<<   作成日時 : 2007/11/05 18:57   >>

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 先駆的な自治体では、多くの訪問時数枠が設けられているため、定期的にお伺いし、個別指導計画立案やケース会議の他に、1時間前後教室に入り、対象となっている子どもと過ごす時間が持てます。

 
 この時間、自分でやってみたうえで、どのような対応が「この子」に有効かを先生方にお知らせすることができるし、先生にも、私の対応を現場でみていただくことができ、とても有意義だと思っています。



 さて、ある園の年少組の○君と一緒に過ごした時のお話。


私が教室に入ったとき、トイレから帰ってきた○君は、棚にあったセロハンテープカッター用の中心(以後“コマ”といいます)をめざとく見つけ、くるくると回し始めました。


みんなで活動を始めようというときだったので、担任の先生はそれをやめさせようとしましたが、○君は無視、私も容認しているのを見て先生はそのままに。


もし、“コマ”を回させたくなければ、彼の目に入るところ、手が届くところに置くのはやめましょう。回した本人が悪いのではありません。置かないことが『先回り対応』です。


脳は成熟するので、子どもにあった対応があれば、卒園するときまでには同じことはやっていません。だから今は事を起こさせないことが大事。



今回私は、この“コマ回し”を利用しました。彼がくれた私用の“コマ”を私もいっしょに回しました。


なぜなら、先生が、給食の隊形からとなりのスペースに「まねっこ」をしながら子どもを誘導し始めたから。きっと彼はこの状況の理解が難しく、みんなと同じに参加するどころか、ウロウロしだしたり、みんなの邪魔をしたりするだろうと思ったからです。


“コマ”をまわしているうちは、結果的にみんなの邪魔になるような言動はないはずです。


本人にとってがんばってもハードルが高いことを、無理やりやらせようとすると、目立つ不適切な言動に至ります。すると、周囲からの評価も、子どもによっては、自己評価も下げてしまのです。何より、対応者との信頼関係が築けません。



 みんなで何か体を動かすようだったので、彼をみんなから離れたエリアに誘いました。一緒にいることで過刺激となり、調子を崩すと考えたからです。


環境刺激の調節は、彼らが不適切な言動をしないために、極めて重要な『先回り支援』です。



 音楽が始まり、運動会のお遊戯の練習が始まるようだったので、彼に、「先生がストップっていったら“コマ”を終わりにして先生の真似してみて」と伝えました。


運動会の練習については、事前に先生から、彼はみんなといっしょにやるのは難しく、別室で先生とマンツーマンでやったら、ほんの少しだけ踊ったというお話を聞いていました。



 私は、少し離れたエリアであっても、みんなといっしょの空間でできないだろうかと考えていました。もちろんみんなといっしょにやることが目的ではなく、彼の、環境からの刺激処理の上限を知りたかったから。


 「ストップ」というと彼はすぐに“コマ”をやめました。さっき先生に止められそうになったときは無視していたのに。


事前予告と「ストップ」というわかりやすい提示は、このタイプの子には有効です。


事前予告も『先回り対応』です。


 そして、私がみんなのお遊戯を真似てやってみると、彼もいくつかの動きを真似てくれました。すぐに終えてしまったけれど、でも、みんなと少し離れれば、教室内でもちょっとだけなら参加はできるということです。


よくできました!



損して得とれ、みんなと別の行動“コマ回し”はさせたけど、「ストップ」でやめる、先生の真似をするの指示にはきちんと従えました。



 さて、みんなのお遊戯の練習も一曲で終わり、今度は床に座ってお話を聞くようだったので、私は、これはみんなの近くで大丈夫ではないかと判断し、○君をみんなの近くに誘導しました。


もちろん、お話を聞くのは難しく、結果的に不適切な言動か、みんなとかなり違う動きを見せるだろうと思ったので、担任の先生に背を向けて、また二人で“コマ”。



動きがあるワサワサした状態ではなくなり、環境のハードルが下がったので、「集団の近くにいる」という意味ではハードルを上げたのです。



しかし、「やること」については、「話を聞く」はハードルが高いと判断し、“コマ”。



「なになに?」って興味をもって“コマ回し”をのぞく子もいたけど、「あたなはきっと先生のお話をしっかり聞けると思うな〜」というとすんなり先生に注目。この後も何度かこの方法で、他の子が○君に引きずられることはありませんでした。



 この“コマ回し”のときに○君は寝転んでやり始めそうになりました。私は、「みんな座っているから、○君も寝ないでやろう」と提示すると、その後1度も寝転ぼうとすることはありませんでした。


先生方からは、なかなかルールは守れないといういう状況も聞いていたのですが、彼の状態に合ったルールなら、難なくクリアできるということです。


 そしてもう二つルールを提示しました。


一つは、長い針が一番上になったら、“コマ”は終わり。


もう一つは、終わりのときには、私の分も“コマ”を片付けるというもの。「先生(私)は、どこに片付けるかわからないからお願いね」と伝えました。


彼は、時間になったら何も言われずとも“コマ”を片付けました。

 

 実は、事前にいただいた先生の指導計画には、片付けをしないという報告があったのですが。


次から次へみんなで遊んだものでなく、確実に自分が使ったものを予告されて片付けるのであれば、何の問題もなくできるということです。


私は、彼に「片付けてくれてありがとう」をいう機会に恵まれました。


 そのままクラスの流れにのって、ホールのポストに自分のお手紙を入れに行くことはできたけど、ポストに入れるという目的を達すると、帰りには、楽しそうにニコニコ笑いながらお友だちにドーンとぶつかっていきました。

ドドーっという人の流れが、過刺激となり、この行動を誘発したのです。

私は○君をホールの水槽見学に誘ってトラブルを回避。


廊下が少しすいてから、教室に帰してあげました。



 私が彼に対してやったことは、「先回り戦略」「環境統制」です。


彼が状況・情報処理できる環境とそうでない環境を選別し、力を発揮できる環境だけ提供しました。そして、みんなと同じクリア目標ではなく、彼のためのクリア目標を現場で次々設定しました。


つまり、地に足を着けて言動ができる環境を提供したということです。


次に、ルールを明確にし、事前予告で見通しを提示しました。



現実にプカプカ浮いている状況ではなく、主体的に状況にかかわる、地に足を着けた行動が、彼らをより大きく成長させるのではないかと。


子どもの年齢や状況、要因によって、かかわり方は違うので、どの子にも同じような対応がよいわけではありませんので、この対応をそのまま他の子にするのはNG。


そして、先生が1人だけなら、別の「先回り戦略」で。



 私が帰り際、園長先生とコーディネイターの先生にご挨拶をしていると、彼がどこからともなくやってきて、私の手の甲にチュッ!

先生方は、「何でしょう?」と私に尋ねられました。


私は、『ぼくの世界へようこそ』という紳士的な歓迎だったのではないかと、勝手な解釈をして帰路につきました。



長らく更新していなかったにもかかわらず、たくさんの方にご覧いただき、予想以上に応援いただき驚いております。一言御礼申し上げます。



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コメント(12件)

内 容 ニックネーム/日時
上原さん、今晩は〜!
アハメッド敦子です。日野の明星大の「アラーファ・研」にいらした事がありますよね・・・。
梅永先生主催の当事者(成人の発達障害)の会に・・。
 
私は、その時参加しました・・・。
現在は、奈良の橿原市(明日香村に近いです。)に転居いたしましたが・・・。
わたしも、こちらでは講演活動や、取材など・・・、原稿書きなども、頑張っています。
当初は、こちらのカテゴリィにいましたが移動して、他のカテゴリィにいます。
 
「自閉症の心模様」http://15490856.at.webry.info/
で、自分の自閉症者としての内側を綴った詩や散文的なものを、書いています。
お時間がありましたら、覗きに来てくださいね〜!
出版予定もあります・・・。
 
これから、上原さんのブログを応援させて頂きます〜!
リンクの仕方が分らずにいますので、お気に入りに登録させて頂きます。
後、私の「手記」の連載ページもあります。(プロフィールに記載してあります・・・。)
近々、又 講演会もすることになりそうです・・・。
かのこ
2007/11/06 02:42
度々ですみません・・・。
私のページに、飛べるように設定し忘れましたので、再度・・・会員用のコメントでつけさせて頂きました。
厚かましくすみません・・・。
かのこ
2007/11/06 03:01
ブログの更新、お待ちしておりました。
今回は、少し間があいたので、忙しくされているのか、
はたまた体調を崩していらっしゃるのかと
思いましたが、きっと前者かなと思い、
コメントさせていただいております。
が、体調には十分お気をつけくださいね。

さて、今回もじっくり何度も読ませていただきました。
「先回り戦略」「環境統制」・・・。
本当にそうですね。
またまた今回も参考にさせていただきます!
先生のように、その場で臨機応変に
子どもに合わせたハードルを設定したり、
環境を調整できるようになればなあと
思いました。でも、これは、多くの経験と
確固たる理論に基づいたものをお持ちだからだと
重々わかっております。
私なりに、アンテナをはって、子どもたちの世界が
少しでも垣間見られるように、見せてもらえるように
がんばりたいです。
しんたの
2007/11/06 06:02
かのこさん、コメントありがとうございました。
明星大学にはお伺いしたことがなく、残念ながらかのこさんにお会いする機械もなかったようです。
しかし、何かのご縁ですので、出版された暁には、読ませていただきたいと思います。
実は、私が一番参考にしている本は、専門家といわれている方の本ではなく、自閉症の方ご自身がその精神世界を綴られた本なので。
上原芳枝
2007/11/06 21:13
しんたのさん、いつもお読みいただきありがとうございます。
そして、ご心配いただき恐れ入ります。

せっかくブログを書くのだから、できるだけたくさんの方にお読みいただいた方がよいかと思い、ブログランキングに登録しました。すると、何となく頻繁に更新しなくてはならないような気になって、更新し続けていたのですが、割と渾身の力を込めて書いているところがあるので、オーバーワーク解消のために、更新期間をあけることにしました。

「先回り戦略」や「環境統制」または、意識へのアプローチの段階に入った子にはそれについて、私も“しまったー・ごめーん!”と思う瞬間がまだまだありますよ。
でも、私にとっては子どもが魅力的なのと、こうかなー、あーかなーと考えるのが結構好きみたいで、子どもへの対応に関しては、かんばってる感はあまりないですが、日々精進ですね。
上原芳枝
2007/11/06 22:23
今晩は。もしかしたら・・・、アラーファではなく・・他の所だったかもしれません・・・。頂いた資料が手元にありますので・・・「上原芳江」と、書かれてあります。もしかしたら・・・、「自閉症協会」とかに来られたでしょうか・・・?けれど、お会いしているのは確かなのです。リソースセンター?の紹介などもされていましたが・・・?
それとも、同姓同名の方でしょうか・・・?
もし、そうでしたら、大変失礼致しました。

私は、母子連動の自閉症者ですが常に自分の内側を模索しながら、今日まで生きてきました。
 
それは、幼少期から、気づかずに成長をしてきてしまった私と我が子の、失敗を他の方々には繰り返してほしくない・・・。その様な思い出手記を綴ってきました。
私自身も、アスペルガーとしての困難性を多く抱え持って来ました。
けれど、一つひとつ・・・支援の場を模索しながら必死に歩いてきたつもりでした。
また、ここでも・・・困難性が出てしまいました・・・。お許しください。
かのこ
2007/11/07 20:25
かのこさん、こちらこそ記憶が定かでなくて申し訳ありません。どこかでお会いしていたのかもしれませんね。

「…失敗を他の方には繰り返してほしくない…。」、私は当事者の方というわけではありませんが、傍らにいる者として、思いは同じです。そして、誤解から生まれる悲劇を避けるために、お役に立つことができればと思っています。

アラーファのことは、アスペルガーということでなく、ありがちな「勘違い」ということではないでしょうかね。

ところで、奈良の大宇陀?というところに立ち寄ったことがありましたが、いーところでしたー。吉野葛を購入したように記憶しています。
上原芳枝
2007/11/08 21:34
貴重なブログ、勝手に引用させていただきました。
ご了解戴ければ、うれしいです。

まずかったら、削除します。

November 12, 2007
教師の専門性

http://plaza.rakuten.co.jp/zyx1830/diary/200711120000/



今日
2007/11/12 12:27
上原先生、LD学会発表奨励賞受賞おめ。ますますの御活躍祈願。たまには更新よろしくおねがいしますね。
れお
2007/11/20 15:07
はじめまして。
10月から特別支援教育支援員として
手探りで頑張るmisokoと申します・・・(笑
とてもためになるブログで
何度も読ませていただきました!
また、勝手ながらブックマークに追加させてもらいました
どうぞよろしくお願いいたします
misoko
2007/12/18 20:11
れおさん、コメントありがとうございました。
また、返信が遅くなり失礼いたしました。
思いがけず賞をいただきました。
私は研究者ではないので、学会の賞に
それほどの価値を置いてはいませんが、
園や学校との連携の実践についての発表で
いただいた賞なので、
実践者としてある一定の評価をいただき、
そしてより一層働け!ということなのかなーと
受け止め、これからもマイペースでがんばろう
と思う今日この頃です。
上原芳枝
2008/01/31 14:57
misokoさん、コメントありがとうございました。
今頃の返信ですみません。
そして、お読みいただきありがとうございます。
学校や園で仕事をすることが多くなり、
支援員さんの重要性をつくづく感じております。
子どもによっては、その子の成長は担任の先生
より、支援員さん次第という場合もある重要な
役割です。
みんなと同じことをさせるための支援でなく、
その子の成長をサポートする支援を
是非お願いしたいと思います。
上原芳枝
2008/01/31 15:06

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